我々医療界の一つの特徴
医師間で、毎日毎日、何十年間、人に教えます、人から学びます、
スーパーローテの始まる前は、入局したチビ医者を、初めは先輩として教えます、
そのうち10年目くらいの中堅になると初めての晴れ舞台、
オーベン(ドイツ語で上の意味:指導医)として、ウンテン(同じく下の意味:1年目の新人)を受け持ちます、期間は1年間の長き、
技術と知識は当たり前、病院内施設、物品の配置、ローカルルール、申請、届出、他の先生の取説、何から何まで教えます、その他、飯から酒から、朝から晩までいつも一緒、親子です、
2004年にスーパーローテが始まってからは、基本的に3ケ月間、選択で希望があると追加して1-2ケ月、前任施設だと、研修医が1年で16名ですから、同時期に4名づつ教えました、20年で320名を教えました、
総数は1000名くらいでしょうか、
私の持論ですが教えるのは「頭と手」、「手」は、最初は末梢静脈確保、動脈採血から始まって、創処置、ありとあらゆる縫合、関節穿刺、抜爪、spinal tap、エコーの撮り方、脱臼、ヘルニア整復、CV挿入、気管挿管、気管切開、開胸心マッサージ、各種の手術、
頭は、画像の診断法、薬剤の使用法、検査データの解釈、心電図の解釈、からはじまって、臨床推論、患者管理、倫理、法律問題まで、手よりも頭の方が大切です、
でも、手が出来ないと、頭が使えないこともあります、習得せねばなりません、
私の教え方は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は育たじ」法です、未熟なうちから無理やり一人でさせるのではなく、何度も成功体験、ゴールドスタンダードを見せて、正しい到達点を教えます、これが一生役にたちます、間違った考え=”spinal tapは通常1時間かかる”を持ってしまうのを防げます、
教育はテクニックだと思っています、
二人羽織やったり、密着指導したり、泳がしたり、その中で、教育の有用なツールが重要性を知らしめるための、叱責です、
昔は「アホ、馬鹿、間抜け」や「アッチ行け、邪魔や」から、手術室では、足でける、手の甲を叩く、まで、やられた時期からやり返しの時期まで、イッパイ経験しました、
昨今「パワハラ問題」の潮流が始まって、いじめ的な変質パワハラは大嫌いですが、ベテラン医者が涙ながらに訴えるのが「パワハラと言う名の“パワハラ被害”」です、
なんでもかんでも「パワハラ」「パワハラ」のために、重要性の伝達や教育に効果的な叱責が出来ない、インパクトを強めるために使う「患者が死ぬぞ!」の叱責が出来ない、
優しく、心を傷付けることなく、「もし、よろしければ、そのような患者健康を侵害するような行為は、お控え下さいませ」言えってか?
”パワハラや”と被害を訴えるときは、その前後を必ず言って欲しい、なぜ、その言動が始まったか言ってね、アンタのミスが原因なんだからね、
世の中、育てるため、伸ばすためのツールがあります、
賞金であったり、賞賛であったり、「おだて」と「叱責」は最高のツールです、
必死になります、自覚します、
私もそれで学びました、
使わせて欲しい、
どんな言動をとっても相手との間に、ラポー”フランス語で信頼関係、心の通じ合うさま、敬意、好意から生まれるもの”があれば、なんのトラブルもない、
昔の弟子からも、最近”死にさらせ”と言われなくなったので寂しいと言われます、
医者一日目の緊張感一杯のチビ医者を育てるのは楽しい、
目がランランと輝いています
4-6月教えるチビ医者と一年が終わる1-3月のチビとは違う、
2年目は、1年と比べると風格があります、
研修医の当たりハズレもあります、
熱意の無いヤツ、何でも勝手にやりすぎるやつ、反応の鈍いヤツ、逃げるやつ、
因みに、当院の今年は最高のやつらばかりでした、有難い、
経年的成長曲線、1年目は90度の急上昇、
その後はドンドン鈍り、20年目の1年は平行線になり、いつしか下降線が始まります、
ナントカ平行線になるためには毎日の”学び”が必要です、
この中で「教えられ上手」が必要です、
私、それが全くヘタクソだったので、苦労しました、
指導者が手技を成功させた時は大きな声で「流石ですねえ」と言う、
講釈を言われたときは「ホッホー」と言う、
何かをやってみろ、と言われたときは「有難うございます」と大声で言う、
どれも出来なかった、
時には「それ間違ってるんちゃいます」と言いました、
そらアカンわな、
どんどん“ハネコ”にされました、
いつの間にか、皆は色んな手技をやらされてもらっているが、私は、呼ばれたことが無い、トホホ
私「赤ペン先生」と呼ばれています、
人の発表スライド、発表原稿、論文から挨拶文、随筆まで、やりました、
良いものにしたいので、赤ペンは多い時には100回レベルになります、
時々目にする意味のない赤ペン、
曰く「もう少し客観的に・・」、「俯瞰的に・・」、ではなく、
時には文献までつけて”ここの文章を引用”とか、すべて具体的な指示です、
真っ赤になります、
以前に出した特集号を再版することになって、今はエライさんになっている、昔の弟子に依頼しました、
何年かぶりに原稿が帰ってきた、
メチャクチャ良く出来ている、
そのため「直すところない」でリターンしたら、「嘘でしょう」「ちゃんと見て下さい」と、言われた、育てるは、ホンマに難しい、
それでも「這えば立て 立てば歩めの 親心」でやっていきます、




